「コロナ禍で、あってよかった困窮法」

生水:ほんまにその通りです。誰も断らない相談体制、誰をも受け止める相談の窓口である生活困窮者自立支援制度は、コロナ禍において最も役に立った制度だと思います。

「あってよかった困窮法」と言っているんだけど、これがなければ、役所の中で「ウチではありません」「あちらに行ってください」ということが起きていただろうな、と。

 だから、どう広めていくかという話ですが、困っている人にストレートに伝わらなくても、その方のまわりにいる人たちに、困っている人がいればつないでくださいね、相談を促してくださいね、とアピールしていくことが必要だと思います。

 高齢者であれば地域包括支援センター、その他にも民生委員さん、ヘルパーさん、地域の自治会長さん、子どもであれば小学校のスクールソーシャルワーカーといった方々です。

 これは、自治体の単一の課にはできないことなので、庁内連携を活用して、機能的に動かなければだめなのですが、この庁内連携がなかなか進まないと聞いています。

 私は前回の審議会で、自治体の庁内連携には情報共有が必要であると訴えました。結果、平成30(2018)年度改正で、支援会議の設置にもつながりました。

 ただ、支援会議を設置する自治体は4割程度にとどまっています。関係機関の情報共有が庁内連携の一つの肝なのに、「必要ない」と回答している自治体があるのにびっくりしました。

 前回の審議会でも「どういうことやねん」と発言したんだけども、なかなかね。

林:制度を知ってもらうという点では、やはり近いところから始めるしかないですよね。

 例えば、自治体の中で知ってもらって、次に社会福祉協議会のような関係機関で知ってもらって、さらに関係機関がつながっている地域の方々に知ってもらう。そうやって泥臭く、徐々に広げていくしかないと思います。

 この間、地域の老人クラブの会合に行った時に、老人クラブの方が篠原さんの本を持っているんですよ。サインくださいって。「いや、著者じゃありませんから」というやりとりをしたんですけどね(笑)。

 ただ、それがきっかけで、今度老人クラブの連合会でお話をする機会をいただいたんです。老人クラブに参加されている高齢者は地域でいろいろ活動されている方も多いので、そういった方々を通して地域に制度が認知されていく。

 こういうつながりを、自治体の職員が泥臭く広げていくしかない。

「断らない相談支援」を掲げる神奈川県座間市生活援護課(写真:Ricardo Mansho)