世界では1年間に100万点もの本が出版されているが、日本語に翻訳されて読むことができるのはたった0.005%ほどと言われている。翻訳本は著者印税以外に原書の版権取得費用やエージェント手数料、翻訳者印税など、コストが高い。そのため、市場が小さくなる一方の出版業界では手を出しにくくなっている。海外では何カ国語にも訳されて読まれているのに、日本では出版されない作品も多い。
そうした作品を翻訳出版するため、制作に関わる費用の一部をクラウドファンディングで集める仕組みを作ったのが株式会社サウザンブックス社だ。作品を届けたい人が発起人となり、読みたい人が支援をする新しい仕組みでは、いったいどんな作品が届けられているのか。代表取締役社長の古賀一孝さんにお話を聞いた。
*サウザンブックス社HP(http://thousandsofbooks.jp/)
潜在的な読者を把握し、出版社も損をしない仕組み
――何カ国語にも訳されて世界中で読まれている作品でも、日本には入ってこないものが多いと聞きました。
古賀一孝氏(以下、古賀) いま、日本では、出版市場が縮小しています。その一方で、地方に拠点を構える小規模出版社や、こだわりのラインナップをウリにする独立系書店が増え、大手出版社や大型書店を中心としたビジネスモデルとの二極化が進んでいます。その中で、コストのかかる翻訳出版は宙ぶらりんになっている印象があります。
翻訳本は通常、海外のブックショーで各国の出版社が売り込んでいる本の権利を買って出版することが多いのですが、それは売れることがわかっているメジャーな作品で、マイナーなものはこぼれ落ちてしまいます。かといって、出版しても大した売り上げが見込めなければ出版社も困ります。でも、マイナーな作品でも「読みたい人がいる」と事前にわかれば、私たちのような小規模出版社がやれると考えたのです。