プーチンの大失政はロシアに大きな爪痕を残すことは間違いない(東方経済フォーラムで9月7日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

プロローグ/漂流するプーチン・ロシア号

 ロシア(露)のV.プーチン大統領(69歳)を船長とする「プーチン・ロシア」号は、目的地不明の羅針盤のない航海に出た結果、ロシアの国家戦略とエネルギー政策が漂流しています。

 旧ソ連邦復活を夢見て、羅針盤のない航海に出た「プーチン・ロシア」号がどこに到着・漂着するのか現状では不明です。

 しかし、沈みゆく船から真っ先に鼠が逃げ出すがごとく、鼠は既に逃げ始めています。

 漂流の途中で食料が尽きる可能性もあり、座礁するか、無人島に漂着するかもしれません。

 戦艦バウンティ号のように、近い将来、船内反乱が起きることもあり得ましょう。

 プーチン新ロシア大統領が2000年5月に誕生した時、彼のスローガンは強いロシアの実現法の独裁でした。

 ロシアの大統領は弱いB.エリツィン大統領から強いプーチン大統領に代り、ロシア国民はプーチン大統領誕生に期待を寄せていました。

 当時サハリン(旧樺太)に駐在して、現場で「サハリン-1」プロジェクトに従事していた筆者も、新大統領登場によりロシアは変わるだろうと期待しておりました。

 その22年後の2月24日、ロシア軍はウクライナに軍事侵攻開始。

 結果として、弱いロシアの実現大統領個人独裁の道を歩んでおり、プーチン大統領は自らロシアの国益を毀損することになりました。

 これを歴史の皮肉と言わずして、何と言えましょうか。

ロシアの国益を毀損するプーチン大統領

 本稿では、プーチン大統領がいかにロシアの国益を毀損しているのか、ロシアは今後どうなるのか、筆者の独断と偏見と想像を交えて予測してみたいと思います。

 筆者は、プーチン大統領は3本のルビコン川を渡ったと考えます。

 1本目のルビコン川はロシア・ウクライナ国境、2本目のルビコン川は天然ガスパイプライン(P/L)を政治の道具に使ったこと、3本目のルビコン川は大統領令によりロシア連邦法を破ったことです。

 旧ソ連邦と新生ロシア連邦は欧州大手ガス需要家にとり信頼に足る天然ガス供給源として、過去50年以上の長きにわたり、天然ガスを安定供給してきました。

 しかし、これは当然です。他に主要外貨獲得源がないゆえ、信頼に足る石油・ガス供給源としての地位確立は旧ソ連邦・新生ロシア連邦にとり国益そのものでした。

 ところが、露プーチン大統領は旧ソ連邦・新生ロシア連邦が過去50年以上の長きにわたり営々と築いてきた信頼を一日にして喪失。

 文字通り、「築城五十年、落城一日」となりました。