(牧村あきこ:土木フォトライター)
豊かな原生林が続く十和田八幡平国立公園の中、岩手県の最高峰、岩手山に連なる山々に向かう県道の先に、車両通行止めの橋がある。
閉ざされた鉄のゲートの向こうにあるのは「松川大橋」。1985年10月に完成したクリーム色の堂々としたアーチ橋は、これまで一度も一般車両が通行しないまま、現在に至っている。
その理由を調べていくと、この半世紀で大きく変化した「日本の社会環境」が見えてきた。
県道の終点から松川大橋に向かう
松川大橋があるのは、岩手県の雫石町と八幡平市をむすぶ岩手県道212号雫石東八幡平線(以降、212号)だ。212号の終点である八幡平市柏台のこの交差点からスタートしよう。
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交差点から10分程度走ると、ここから先が「十和田八幡平国立公園」であることを示す看板が見えてくる。緑豊かな車窓だが、まだ国立公園を実感するような雰囲気はない。
さらに南西方向に20kmほど走ると、八幡平樹海ライン(県道318号)との分岐点が見えてくる。道なりに進むと右方向に曲がるのだが、松川大橋に行くには直進だ。木々がうっそうとしていて、分岐点を見落としそうになる。