「女たちを撮るな!」

 こういう地域では外国人ジャーナリストの女性も苦労する。

 パキスタン北西部のクエッタで開かれた反米集会でトラブルを目撃した。取材に来た白人女性ジャーナリストが立ち入りを拒否されたのだ。怒り狂った女性が主催者に詰め寄って激しく抗議していた。だが、結局女性は中に入れてもらえなかった。主催者の一人は「あんな生意気な女には鞭をくれてやればいい」と、吐き捨てるように言った。

 アフガニスタン国境の町チェマンの難民キャンプには戦火を逃れてアフガニスタンから入って来た人々が収容されていた。女性達はもちろんブルカで全身を覆っていた。その表情は窺えない。女性用テントの中は静かだった。言葉を発する者は誰ひとりとしていない。静かに子供を抱いている姿は孤独と悲しみを感じさせた。

目元も網目で覆ってしまうブルカを着た女性(撮影:橋本 昇)
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 タリバンの案内で国境を越え、アフガニスタンのカンダハルに向かった。トラックの荷台から眺める大地は、荒々しい岩と僅かばかり草木の漠々とした光景だった。ブルカを纏って歩く女性達を、車の巻き上げる土埃が呑み込んでいく。女性にレンズを向けるとタリバン兵士が強い剣幕で怒鳴った。

「女たちを撮るな! あんたは女たちを撮ってタリバンが女たちを抑圧していると言いたいのだろうが」と、その口調は激しかった。

「俺たちがカブールを押さえた時、女たちは堕落していた。素肌を丸出しにし、中には酒を飲む奴もいた。我々はそんな女たちを地獄の炎から救ってやったのだ」

(写真:橋本 昇)
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