「第7波」で新型コロナの感染が拡大する中、マスクを着けて都内の交差点を行き交う人々(2022年7月25日、写真:AP/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 7月に入ってから新型コロナウイルスがオミクロン株の派生型「BA.5」に置き換わったことにより、爆発的に感染が拡大してきた。第7波に突入したということだ。それでも岸田文雄首相は、「行動制限はしない」「メリハリのきいた対策をとる」と言い続けている。

 感染の抑止に行動制限が効果的なことは自明のこととされてきた。だからこそこれまで何度も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置をとり、人々に強い行動抑制をかけてきた。新型コロナウイルスによる感染症が人と人の何らかの接触によって拡大していく以上、これらの措置がどれほど効果的だったか定かではないにしても、他に手がなかったということだろう。中国ではロックダウンにより、日本よりもはるかに厳しい行動制限を行っている。

「BA.5」は、これまでのオミクロン株よりも1.5倍以上も感染力が強いと言われている。その株が流行している時に行動制限をかけないのだから、感染が爆発的に拡大することは理の当然である。

 いま日本経済は、円安、ロシアによるウクライナ侵略などにより原油や食糧品などが急激に値上がりし、国民生活に大きな打撃を与えつつある。こんな時に新型コロナウイルスによって、また強い行動制限をかけるなどという判断はできないということだ。つまり行動制限をかけないというのは、「感染拡大もやむを得ない」ということと同義であり、それが岸田内閣の方針ということなのだ。政治の判断として、こういう判断はあり得ることである。