(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
現在の韓国政府が日韓関係の改善をいくら声高に訴えてきても、日本は慎重でなくてはならない。なぜなら、尹大統領が今のままでは関係改善は絶対に無理だと思うからだ。
7月18日、来日した韓国の朴振(パク・チン)外相と日本の林芳正外務大臣との日韓外相会談が行われ、徴用工問題を早期解決することで一致した。朴振外相は19日には岸田文雄首相を訪問。日本の首相が韓国の外相と面会するのは4年ぶりである。
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領にとって、日韓関係の改善は米韓関係の改善に次ぐ外交政策の最重要懸案の1つである。
日韓関係が冷え込んだきっかけは、2012年8月の李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島上陸だった。それからかれこれ10年、日韓関係は底を突き抜けるほど悪化した。
竹島上陸に輪をかけて両国関係を冷え込ませた出来事は、2015年12月28日に朴槿恵(パククネ)政権との間で結ばれた慰安婦合意である。その後、朴槿恵大統領が弾劾されて政権の座に就いた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、就任早々から慰安婦合意で約束されていた日韓慰安婦財団の解散を示唆。当時の安倍晋三首相は日韓首脳会談で3回にわたり文大統領に対して慰安婦合意の履行について直接訴えたが、2019年7月に慰安婦財団は日本側との同意なく解散された。