(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
姿を消した早熟の少女
蒼いぼくの視線をはぐらかして
ルージュの口びる夢に現れ
からだが静かに熱く震える
夏になると、そわそわする。7月28日は中森明菜が「少女A」をリリースした記念日だからだ。その日は毎年特別な思いで迎えているが、40周年の今年はなおさらだ。
「少女A」はデビュー曲の「スローモーション」に続く2つめのシングルレコードとして発売された。「スローモーション」は当時のアイドルの歌らしい女の子の純情を歌い上げる楽曲で、売れなかったわけではないが反応はいま一つだった。その雰囲気を打ち破ってヒットしたのが「少女A」だった。
作詞を担当した売野雅勇(うりの・まさお)が「不良性」をコンセプトにしたと語っているように、デビュー曲とは正反対である。ところが明菜自身はそこにかなりの抵抗があって、レコーディングも乗り気にならず、「1回だけ歌って終わりにすればいい」と周囲に説得されてしぶしぶ引き受けた。当然ながら、ふてくされた歌声になったのだが、これが歌詞にぴったりで大ヒットを呼んだという逸話は有名だ。
その後、明菜はライブの時でもしばしばこの楽曲を歌っているので本当にそうだったのかと疑念を抱いてしまうが、この曲が当時のTBS系音楽番組「ベストテン」で第9位にランクインした時に、「『スローモーション』の方が好きなんです」との明菜自身の言葉が紹介されている動画を発見した。