© Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021

 プラスサイズモデルや高年齢のモデルが活躍し、ミスコンが廃止され、ルッキズムが問題視される現代。美人、イケメンといった言葉はそのうち、死語になるのか。一方で、男性の美意識はどんどん高くなり、韓流アイドルの影響か、メイクする男性も増えてきた。どんな顔に生まれてきたら、人は満足するのだろう。

巨匠ヴィスコンティが見出した15歳の美少年

『世界で一番美しい少年』は名作『ベニスに死す』の美少年タジオ役ですい星のように現れ、その美しさで世界に衝撃を与えたビョルン・アンドレセンのドキュメンタリーである。映画を見たことがなくても、美しいセーラー服姿のビョルンのポートレートは誰もが一度は目にしたことがあるはずだ。

© Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021

『ベニスに死す』はトーマス・マンの同名小説が原作で、リド島に静養に訪れた老いた作曲家(ダーク・ボガード)が宿泊先のホテルで見掛けた少年タジオ(ビョルン・アンドレセン)に魅了され、恋焦がれ、破滅へと向かうストーリー。

 カミングアウトしていた巨匠ルキノ・ヴィスコンティは自分自身を作曲家に重ね、ヨーロッパ各国で血眼になって、タジオ役にふさわしい男の子を探した。オーディション会場に白人の碧眼の男の子たちが一堂に集められ、品定めしている監督の姿はいま見ると異様である。そしてついにストックホルムで15歳のビョルンを見つける。