(髙山 亜紀:映画ライター)
片山友希、坂東龍汰、W主演の『フタリノセカイ』を見て衝撃が走った。トランスジェンダー男性を演じているのが俳優の坂東龍汰だからである。
これまでは、男性の俳優がトランスジェンダーを演じる場合、生まれた時の性は男性で自身のことを女性と自認しているトランスジェンダー女性を演じることがほとんどだった。人気俳優が女性を演じるという視覚的な印象が強いこともあるだろう。生田斗真がトランスジェンダー女性を演じた『彼らが本気で編むときは、』や最近では草彅剛の主演映画『ミッドナイトスワン』などは特に大きな話題になった。
今回は逆のチャレンジである。でも、ふと思うのだ。体のことはともかく、演じる俳優からしてみたら、女性の心理より男性の心理の方が共感しやすいのではないだろうか、と。男である自分が女性として扱われたらどんな気持ちだろう。その違和感の方がよく理解できるのではないだろうか、と。
監督自身、トランスジェンダー男性
『フタリノセカイ』はLGBTQの「T」、トランスジェンダーの男性とその恋人でシスジェンダーの女性の10年間を描いた物語。シスジェンダーとはトランスジェンダーに対して、生まれた時に割り当てられた性と自認している性が一致して生きている人のこと。
飯塚花笑監督は自身がトランスジェンダー男性である。当事者である監督が体験をもとに脚本を書き、自分を投影したキャラクターに男性をキャスティングした。