「トランスジェンダー男性」に見えてくる坂東龍汰の確かな演技力

 保育士のユイと家業の弁当屋を手伝っている真也は一目で恋に落ちる。友人から「2人で一つ」と言われるほど、仲がよかったが、なかなか一線を越えられない。いったい、なぜ? ユイは彼の浮気を疑い始めるが、真也には彼女にまだ伝えていないことがあった。

 そんな折、真也が入院。ユイは彼の本当の名前が「愛」だと知る。真也からお金をためて手術をし、戸籍を変えたら、結婚したいと打ち明けられるユイ。胸があるのに、男性器がない。真也がセックスを拒むわけだった。ユイは戸惑うが、大好きな真也と一緒にいたいという思いを優先する。

©️2021 フタリノセカイ製作委員会

 真也役の坂東龍汰は当初、FtM(Female to Maleの略。女性として生まれ、男性として生きることを望む人)の真也をどう演じたらよいか、考えあぐねていたそうだ。女性らしさを出した方がいいのか。ただ、男性であり、女性を愛する真也は自分と変わらない。飯塚監督からは「そのままで」と伝えられた。とはいえ、幼い頃からの女性の体への違和感、苦悩、葛藤、コンプレックスは計り知れない。撮影のために胸を特殊造形し、ブラジャーを付け、過ごすようになった坂東は誰かに気づかれるのではないかと自然とびくびくするようになったという。

 作られた胸が実にリアルで驚いたのだが、身体の一部をなくした方が外見を取り戻すために使う人工ボディパーツ「エピテーゼ」で制作されたとか。劇中でもいつも少し猫背の真也。当たり前だが、男性にしか見えないはずの彼が、トランスジェンダー男性にしか見えなくなる。

©️2021 フタリノセカイ製作委員会