(髙山 亜紀:映画ライター)

 日本の高度成長期を支えた団地。いまや次々と取り壊され、その跡地にはタワーマンションがそびえ立つ。住んでいた人たちはどこに行ったのだろう。育った人たちはどうしているのか。最近は自ら実家じまいをする人が多いが、突然、生まれ育った場所を奪われる心情は計り知れない。

 団地を舞台にした映画には傑作が多い。是枝裕和監督は育った団地で『海よりもまだ深く』を撮った。『家族ゲーム』『はちどり』・・・。そういえば、阪本順治監督はずばり『団地』でSFコメディを手掛けた。ロンドンの貧しい公共団地にエイリアンが襲来する『アタック・ザ・ブロック』というのもあった。もしかして、SFと団地って意外と取り合わせがいいのかも。

取り壊しが決まった団地、その姿を残すために映画化

 『GAGARINE/ガガーリン』はパリ郊外に実在した団地を舞台にしたドラマだ。いま、北京がオリンピックで盛り上がっているが、このガガーリン団地は来るパリ・オリンピックに向けた再開発ですでに取り壊されている。

 手掛けたのは本作が長編監督デビュー作となるファニー・リアタール&ジェレミー・トルイユの男女ユニット。共にボルドー政治学院で学び、その後、映画制作の道に転向したという異色コンビで、政治学院を卒業後、ジェレミーはインド、南アメリカを旅して、ドキュメンタリー制作の修士課程を修了。ファニーはレバノンに渡った後、マルセイユで都市再生に関するアートプロジェクトを手掛けた。

 ファニーに建築家の友人がガガーリン団地の映像を残してほしいと依頼。団地のために、住民たちを取材し、この物語ができあがった。