拷問を受けたことを物語る遺体の膝の弾痕

 遺体の脇に小さな黄色の識別札が置かれる。7人の冥福を祈りながらシャッターを切った。物言わぬ姿となった遺体の一部は目隠しがされているようだった。ネビトフ本部長やキーウ州警察署はSNSで「民間人」と広報した。翌日、現地メディアは「民間人」と一斉に報道した。筆者には「民間人」なのか「領土防衛隊」なのか区別がつかなかった。

 ネビトフ本部長は「膝への銃弾は拷問を受けたことを物語っている。テープで後ろ手に縛られていたことは長い間、拘束され、情報を聞き出そうとするロシア軍に拷問にかけられたことを物語っている。ロシア軍の非道さを示す動かぬ証拠だ」と説明した。キーウ州でのロシア軍の拷問と大量虐殺、遺体隠しはどう見ても組織的に行われている。

遺体を森の中から担架で運び出す係官(13日、筆者撮影)

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はアメリカユダヤ委員会に対し、ロシア軍の爆撃でマリウポリのアパート地下で両親とともに死亡した2人の幼子の名前を挙げた。2人は今年生まれたばかりの幼子だ。街がロシア軍に包囲され、完全に破壊されたマリウポリでは24人以上の子供が犠牲になった。

「なぜ2022年にこんなことが起こるのか。今は1940年代ではない。大量殺戮、拷問、焼かれた街、ロシア軍の占領地に設けられたナチスの強制収容所に似た収容所がどうして現実になったのか」。侵略者ウラジーミル・プーチン露大統領から「ナチ」といわれなきレッテルを貼られたユダヤ人のゼレンスキー氏は苦痛に満ちた表情を浮かべた。