「すべての遺体に暴力をふるわれた死の痕跡がある」

集団墓地から引き上げられた民間人の遺体(13日、筆者撮影*画像は一部加工しています)

 1つ目の穴でこめかみと膝を撃ち抜かれた40歳ぐらいの私服男性の遺体が発見された。近くの穴でさらに6人の遺体が次々と見つかったが、性別が不明なものもある。ネビトフ本部長は「合計7人の遺体が見つかり、頭や膝に銃弾を撃ち込まれていた。2人がベルト、またはベルトやテープで後ろ手に縛られていた」と説明した。

 遺体はロシア軍が掘った塹壕のすぐ後ろに埋められていた。7人がどこで殺されたのかは分からないが、すべての遺体に暴力をふるわれた痕跡があった。13日現在で、キーウ州でロシア軍に殺害された民間人の遺体は1316体見つかっている。そのうち700人以上がピストルやサブマシンガン、重機関銃で撃ち殺された。

 鳥のさえずりが聞こえる静かな森で新たに発見された集団墓地から何とも言えない死臭が漂ってきた。ロシア軍が2月24日にウクライナに侵攻して以来、1万2000人以上が殺害され、ウクライナ警察当局が戦争犯罪の証拠を集めている。戦車や装甲車からの銃撃で大量殺戮が行われ、路上や家屋のほか、集団墓地でも多くの遺体が発見されている。

 白い防護服にマスクをした係官がシャベルで土を掘り返し、遺体にロープを結わえて引っ張りだす。死臭が鼻孔に流れ込んでくる。ハエが羽音を立てる。遺体の捜索を何度も取材している現地記者は慣れた仕草で鼻の下に香料入りクリームを塗った。マスクを用意している記者もいる。ボロボロになった衣服と土砂で覆われた遺体は土気色のマネキンのようにリアルだ。

土気色の遺体はマネキンのようにリアルだった(13日、筆者撮影。*画像は一部加工しています)