猛反発する台湾、「中国はグレーゾーン領域の作戦を進めてくる」
実際、台湾は、「綱要」に強く反発している。蔡英文(さい・えいぶん)政権に近い台湾最大紙『自由時報』(6月14日付)は、何澄輝(か・ちょうき)台湾安保協会副書記長のインタビューを掲載した。その要旨は、以下の通りだ。
「中国共産党、政府、軍は一体となって、将来に多くのグレーゾーン領域の作戦を進めてくる。それらは実際にはすべて戦争に導く行為であり、台湾はさらに一層注意していく必要がある。
中国は西側の民主国家とは異なっており、普通の角度から見てはならない。通常の軍事と民間の行為を分離して考えてはならないのだ。中国に言わせれば、いわゆる非戦争軍事行動はすべて、おそらくは軍事的な戦争行為なのだ。
旧ソ連の共産党体制国家も、軍事と非軍事の行為は、厳然と区別されているわけではなく、それらは衝突行為の前段階だった。だからこそロシアは、今回の行為を『特別軍事行動』であり戦争ではないとしているのだ。この行為を中止した際に、戦争行為ではなかったと偽れば、国際法上の責任を逃れられるというわけだ。
こうした衝突は、中国共産党に調整する余地を与え、『綱要』を公布することに意義と存在価値があるというわけだ。中国では政治と軍事は一体だ。台湾の生活経験と教育では、政治と軍事はそれぞれ専門分野として区別される。だが中国では、政治、軍事、警察の任務や各種行為は、すべて国家の衝突行為を進行させる手段にすぎないのだ。
一例を挙げれば、習近平は2015年以降、もともと異なる部門が管轄していた、海軍でない兵力、設備、人員、経常警察などの海上執行任務を、すべて海警局の管理にまとめた。それからさらに一歩、海警の統治を、国務院の管轄から直接の中央軍事委員会、すなわち軍委の管轄へと改編した。
中国共産党が言ういわゆる『非戦争軍事行動』はおそらく、『戦争前段階準備』もしくは『平時から戦時への転換』という中間の段階だ。もしも戦争を発動する時には、その行動をカバーするものとなり、続けて不可解な衝突を起こすだろう。
台湾は必ず警戒しないといけない。中国共産党は将来、おそらくは海上の船舶の衝突を利用して、『戦争前段階の準備』に入るだろう。台湾はこうした状況を、単純な漁業の事件と見てはならないのだ」
いずれにしても、ウクライナ危機が台湾危機にどう影響していくのか、注視していく必要がある。