日本訪問の全日程を終え在日米軍横田基地から帰国するバイデン米大統領(2022年5月24日、写真:ロイター/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 米国のバイデン大統領の台湾防衛発言はやはり「失言」だった。

 中国が台湾を攻撃すれば、米国は必ず軍事介入して台湾を守る、という同大統領の発言は、その背景や前後の状況を精査すればするほど、米国政府、より具体的にはバイデン政権自体の政策とは異なる誤った発言、つまり失言であることが明確となる。

 この失言でまず問題視されるのは、米国政府の政策とは異なる趣旨を公式の場で発言し続ける米国の大統領の実務能力の危機だといえよう。

台湾有事に対して「戦略的曖昧」政策をとる米国

 バイデン大統領は訪日中の5月23日、東京での記者会見で「中国が台湾に軍事攻撃をかけた場合、米国は軍事的に介入する意思があるのか」との問いに「イエス」と答えた。同大統領は「それが私たちの誓約だ」とも述べた。

 だがこのバイデン発言は米国政府の過去および現在の政策とは異なっていた。