(北村 淳:軍事社会学者)
バイデン大統領は「中国が台湾に軍事侵攻した場合には、アメリカは台湾を軍事的に防衛する」とこれまで数回にわたって公に発言している。
あたかも万一の場合にはアメリカ軍が中国軍と戦闘を交えても台湾を防衛することを保証したような大統領の発言だが、バイデン政権首脳たちはそのたびに、「アメリカ政府の台湾政策に本質的な変更はない」と、大統領の“保証”を打ち消すことに躍起になっている。
しかしながら政府高官がいくら火消しをしても、軍隊の緊急使用権限を保持している大統領自らが武力発動による台湾防衛の意図を繰り返して口にしているために、これまで以上に米政権の台湾防衛姿勢が曖昧模糊となってしまっている。
このようなバイデン大統領の発言(あるいは失言)は、中国側を惑わすための戦略的情報戦にちがいないと好意的に解釈する向きもある。だが米軍関係者の間では、単に政権内の台湾支援策が混乱しているに過ぎないと考える人々の方が多く、中には「かねてより取り沙汰されている大統領の認知症疑惑が真実であることを示している」との声も上がっているくらいだ。