グアム島に撤収した空母セオドア・ルーズベルト（写真：米海軍）
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（北村 淳：軍事社会学者）

　アメリカ海軍太平洋艦隊は多国籍海洋軍事演習「リムパック」を2年に一度、主催し開催している。

　本年はその開催年にあたり、リムパック2020には少なくとも26カ国以上の軍隊から艦艇、航空機、陸戦部隊などが参加する予定となっている。そして、リムパック2018に際して除名された中国に代わって参加を熱望している台湾をどのような形で関与させることができるのかが、米海軍では大きな関心事となっていた。

　ところが、COVID-19（新型コロナウイルス感染症）パンデミックの発生により、これまで50年間にわたって継続されてきたリムパックは、中止を余儀なくされる可能性が高まってきた。リムパックの最大拠点となるホノルルや、水陸両用戦部門の大規模演習の拠点となるサンディエゴなどで、感染防止の観点からリムパック2020中止の声が上がっているからだ。

　現在のところ、州政府や市当局による米海軍当局に対する中止要請に対して、米海軍首脳部は中止の決定には至っていない。

　それに対して開催反対を要望する人々からは、「開催地域住民だけでなく参加諸国の人々への新型コロナウイルス感染拡大をもたらしかねないにもかかわらず、リムパック2020の開催に固執している米海軍首脳部は、2020年の東京五輪開催に固執していたIOCの連中と同類だ」と非難を強めている。

リムパックをぜひとも開催したい理由

　リムパック2020は、6月下旬から8月上旬にかけて実施される予定になっている。そのため米海軍首脳としては、それ以前にパンデミックが終息には至らなくとも沈静化の傾向が見られたならば、なんとか開催に持ち込めるのではないだろうか、という淡い期待がある。