東京で開かれたクアッド首脳会合に出席したバイデン大統領(5月24日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 米国の首都ワシントンでは1週間以上が経ったいまも、議論が衰えていない。

 何の議論かと言えば、ジョー・バイデン大統領が来日時に岸田文雄首相と共同会見を行った際、「台湾防衛のために軍事力を行使する意思があるか」と記者に問われて「イエス」と発言した件である。

 すでに多くのメディアで報道されている通り、これまで米国政府は中国との交戦を避けるため、台湾有事があったとしても「戦略的曖昧さ」という言い方を繰り返し、中国と一戦を交える意図はないとしてきた。

 だがバイデン氏は5月23日、中国が台湾を攻撃した時には「受けて立つ」との意思を表した。

 それは「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」への変化であり、関係者は驚き、戸惑った。

 外務省幹部の中にはのけぞった人もいたという。日米両政府がこれまですり合わせてきて内容と違ったからだ。

 欧米メディアの中には、バイデン氏(79)は高齢なため、過去の発言内容を忘れてしまうと報道したところもあった。

 台湾有事の件では、昨夏からすでに3回も軍事力の行使を口にしている。

 1回目は昨年(2021)8月のABCニュースとのインタビュー、2度目はCNNが主催したオハイオ州での対話集会で「台湾を守る公約がある」と述べた。

 ホワイトハウス側は先週、「また大統領がやらかした」として、東京での発言直後、米国の対中政策に大きな変化はないと、すぐにバイデン発言を否定した。