中国を訪問し周恩来首相と会食するニクソン大統領(1972年2月25日、写真:AP/アフロ)

米国務省、台湾独立不支持の文言削除

 5月22~28日の間、スイス・ジュネーブで開催されている世界保健機関(WHO)総会にオブザーバーとしての参加資格を有する台湾を、中国が締め出している。なぜか――。

 米国務省は、「二国間関係ファクトシート」をウエブサイトに掲載している。

 その中の「米国と台湾との関係」で、従来、米国は「中国は一つしかないという中国(中華人民共和国)の立場と台湾は中国の一部である」ことを認め(acknowledge)、「台湾の独立を支持していない」と述べてきた。(括弧は筆者)

 それが、2022年5月5日付で、台湾の独立不支持と自国の一部との中国の見解を認める表記を削除して更新された。

 極めて重大な立場の変更である。

 これに対し、早速、中国外務省は5月10日、この変更を非難し、そのような政治的操作を行っても台湾海峡の現状を変えることはできないと主張した。

 米国務省のネッド・プライス報道官は、表現が一部変更されたかもしれないが「基本的な政策に変更はない」と説明し、次のように述べた。

「ファクトシートは定期的に更新している。台湾に関するファクトシートは、台湾との非公式の堅固な関係を反映している。中国に対し、責任ある行動を取り、台湾への圧力を強める口実を作らないよう求める」

 ジョー・バイデン政権は、2021年1月20日発足以来、台湾との関係を強化する各種の具体策を打ち出してきた。

 大統領就任式に、台湾と断交した1979年以降初めて、蕭美琴・駐米台北経済文化代表処代表を招待した。

 大統領就任式前後には、10機以上の中国軍機が2日連続で台湾南西空域に進入するなど、台湾海峡付近における中国軍の活動が活発化していた。

 それを受け、国務省はプレスリリースで、中国に対し「台湾への軍事的、外交的、経済的な圧力の停止を求める」との声明を出した。

 そして、バイデン政権が進める同盟国や友好国との協力に民主主義国家である台湾との関係が含まれることを明言すると同時に、ドナルド・トランプ前政権の強力な台湾への支援を引き継いでいく方針を表明した。

 2021年3月に公表された国家安全保障戦略(暫定版)では、台湾が「先進的な民主主義国であるだけでなく経済、安全保障における死活的なパートナー」との記述がなされている。

 4月に入り、国務省は台湾との政府間交流を奨励する指針を示した。

 トランプ政権末期にマイク・ポンペオ国務長官が、台湾政府関係者と米連邦職員との接触に関する取扱規程を廃止する旨公表したことを踏襲する内容だ。