米ニューヨーク州大陪審に起訴されたトランプ前大統領(2023年4月3日、写真:AP/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

「ドナルド・トランプ前大統領が起訴されれば、彼は2024年の大統領選挙で地滑り的に勝利するだろう」──こんな大胆な予測を述べたのは、テスラCEOのイーロン・マスク氏だった。

 共和党側では連邦議会上下両院の議員たちが一致団結して、今回の前大統領起訴を「民主党による不当な政治弾圧だ」と非難する。一方、トランプ氏への攻撃を続けてきた民主党側では「トランプ氏はついに今回の起訴で甚大な打撃を受ける」と起訴を歓迎する。

 今や米国の国政をかつてない勢いで揺るがす、ニューヨークの地方検事が推し進めた前大統領の起訴という前代未聞の展開は、民主、共和の両陣営の対決をさらに険悪にした。1人の人物の起訴をめぐり、その見解がこれほど異なる事例も珍しい。

 何が真実なのか。米国の政治は今後どう動くのか。

「民主党側の政治的迫害」とトランプ氏

 ニューヨーク州マンハッタン地区のアルビン・ブラッグ主任地方検事は3月30日、ニューヨーク州大陪審がドナルド・トランプ前大統領を刑法違反容疑で起訴したことを明らかにした。