彼らは、中欧・東欧についての自分たちの理解には限りがある、しかし幸いなことにそれについてはロシアが説明してくれる、と明かしていたそうだ。
もちろん、他国も侵攻を予想できなかった。ひょっとしたらプーチン氏は習氏に事前に警告し、戦争は数日間で終わると納得させたのかもしれない。
だが、伝えられている中国の能力を考えれば、緊急事対応計画や状況認識の欠如は、諜報活動の大失敗を示唆している。
多くの西側諸国の政府にとって心温まる結論は、中国のスパイは必ずしも喧伝されているほど優秀ではないということだ。
米国を忙しくさせる中国
各国諜報部門の幹部たちは口々に、中国はスパイ活動とその能力を近年拡大してきたと語る。
そうした努力の大半は、ロボット、航空宇宙、バイオ医薬など、中国が支配したいと思っている産業での技術窃取に集中している。
米連邦捜査局(FBI)のクリス・レイ長官は今年1月、FBIではざっと12時間に1件のペースで中国関連の諜報活動の捜査を新たに始めていると述べた。
特に盛んなのはサイバー世界でのスパイ活動で、その量はほかの国々の総合計をも上回っていると語った。
また、サイバーセキュリティー企業マンディアントは、2020~21年に中国のサイバースパイは以前よりも「高いリスク抵抗力を見せた」と報告している。
中国は人間を介した諜報活動(ヒューミント)の能力も向上させている。
一部の米国政府当局者は、米中央情報局(CIA)に情報を提供していた中国在住の協力者の多くが2010~12年に投獄や処刑の憂き目に遭ったのは、通信システムの欠陥のみならず、とある中国人の二重スパイのせいだったとしている。
世界で急拡大する権益に追いつかない
中国のスパイはかつて中国系の情報源を頼りにしたが、最近はそれにとどまらない。
盗み取ったデータを使って弱みを持った人物を特定し、リンクトインをはじめとするソーシャルメディアを通じて接触することも少なくない。
また中国は、民主主義国において政治的な影響力を手に入れることにも力を入れ、政治家に資金を提供したり便宜を図ったりしている。
ただし、これについては諜報部門ではなく、中国共産党の中央統一戦線工作部を通じて行うのが普通だ。