民主主義陣営vs権威主義陣営、さらにイスラム圏と東方正教会文明圏

 ウクライナ戦争の行方はまだ混沌としているが、西側諸国によるウクライナへの武器供与、そしてロシアに対する経済制裁は、プーチンが当初描いたシナリオ、つまりゼレンスキー政権を瓦解させ、東部のドンバス州を併合するという目的の実現を困難にしている。

 どういう形で戦争が終結するかは見通せないが、ロシアが大勝利を収めて、その国力、国際的地位が向上することはなさそうである。その後のロシアの政治体制がどうなるかも分からないが、欧米の民主主義体制の対抗軸となるのは不可能なような気がする。

 そこで、権威主義体制の実質的な指導国となるのが中国である。経済的にはGDP(2021年)で世界第2位(約17.5兆ドル)であり世界11位のロシア(1.7兆ドル)の約10倍である。因みにトップのアメリカが22.9兆ドル、3位の日本が4.9兆ドルである。

 軍事情報サイト「グローバル・ファイヤーパワー」の分析によると、2021年の軍事力ランキングで、1位がアメリカ(軍事力指数0.0718)、2位がロシア(0.0791)、3位が中国(0.0854)、4位がインド(0.1207)、5位が日本(0.1599)である。最近の中国の軍拡を見ると、ロシアを追い抜くのは時間の問題のようである。しかも、ウクライナ戦争でロシア軍の消耗は甚だしく、戦争前の状況に回復するには時間が必要である。

 しかし、中国を盟主とする権威主義陣営に北朝鮮とともにロシアが仲間入りし続けるかどうかは不明である。ただ、アジア、アフリカをはじめとする発展途上国の中には、中国の経済援助に依存する国々が多数あり、民主主義陣営が安泰だというわけでもない。

 また、中東をはじめとするイスラム圏諸国は、民主主義vs権威主義という図式では割り切れない別の文明圏である。その動向は、テロリズムとの関連でも先に大きな影響を与えるであろう。

 これに対して、東方正教会文明圏は、今回のウクライナ戦争で大きな打撃を受けてしまった。そのことは、苦い歴史として残るであろう。

*東方正教会文明については、4月16日の【舛添直言】<プーチンはなぜこれほど冷酷になれるのか 東方正教会文明が生み出した「現代のツァーリ」>(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69760)を参照いただきたい。