(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
「唯一の正しい決定だった」
プーチン大統領が、ひとつの節目にするとみられていた、第2次世界大戦で旧ソ連がナチス・ドイツに勝利した5月9日の戦勝記念日。東部のドネツク、ルガンスク2州を含む実効支配地域の「併合」に言及する、あるいは「特別軍事作戦」としてきた侵攻を「戦争状態」と宣言して総動員をかけるなどの憶測が飛び交っていた。
ところが、首都モスクワで行われた軍事パレードの演説で、プーチンはウクライナへの侵攻について冒頭のように語り、「ネオナチとの衝突は避けられなかった」などと正当化してみせるだけだった。
だが、いまロシア兵がウクライナでやっていることが「正しい」ことなのか。
防犯カメラが捉えた、否定しえない略奪の実態
「数千人もの犠牲者。数百件もの拷問。遺体が排水溝や地下室から発見され続けている」
「数百件のレイプも記録されている。被害者には幼い少女や、とても幼い子ども、さらには赤ん坊までもいる」
いずれもウクライナのゼレンスキー大統領が訴えている言葉だ。
ロシア軍がウクライナの首都キーウ(キエフ)の制圧に事実上失敗して、先月撤退したあとの周辺地域の惨状は、映像といっしょに報じられている。
キーウの北西に位置するブチャでは、民間人の遺体が路上に散乱していた。後ろ手に縛られて、後頭部を打ち抜かれた死体もある。長さ約14メートルにわたって掘られた集団墓地では、150〜300体の遺体が見つかった。