カザフスタンの動向にも微妙な変化

 カザフスタンの動向も気にかかる。今年の1月、カザフスタンでは、燃料価格の高騰に抗議するデモが暴徒化したが、トカエフ大統領は、ロシア主導の軍事同盟である「集団安全保障条約機構(CSTO)」に治安部隊を派遣するように要請した。これに応じてロシアの精鋭部隊がカザフスタンに入り、事態を鎮静化させた後に撤退した。

 CSTOは、ソ連邦崩壊後の1992年5月にロシア、アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンが組織したものである。翌1993年にアゼルバイジャン、グルジア(ジョージア)、ベラルーシが加盟し、1994年4月に発効した。その後、離脱する国も出てきて、現在は、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国が加盟している。

 ジョージアは、NATO加盟を目指し、また先述したように親露派分離勢力をかかえながらロシアと対立している。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、西側諸国による経済制裁を招き、それは、親露派諸国にも影響を与えている。

 3月15日、ロシアはユーラシア経済連合(EEU、EAEU)への小麦など穀物や砂糖の輸出を一時的に禁止することにしたが、これは、戦争の長期化に備え、ロシア国内自給態勢を強化するためである。

 ユーラシア経済連合とは、2015年に発足した地域経済協同体で、ベラルーシ、カザフスタン、ロシア、アルメニア、キルギスが加盟国である。EUに対抗する経済協力体樹立を狙ったプーチンの構想だが、ウクライナは賛同せずに、EU加盟を求めた。それもまたプーチンのウクライナ憎悪に繋がったのである。

 カザフスタンでは、ウクライナ情勢、そして、経済制裁に伴う小麦や砂糖の禁輸を前にして、CSTOやEAEUから脱退すべきだという声もあがり始めている。中央アジアの大国、カザフスタンの今後の動きも要注意である。