親ロシア地域でも揺らぎ

 5月9日の対独戦勝記念日では、ロシアは期待した戦果もあげられず、プーチンは、ウクライナ侵攻を正当化することに終始した。ナチスを倒したソ連軍を称え、ゼレンスキー政権をナチスと規定して、戦争を継続することを明らかにした。ロシア人のナショナリズムに訴える手法は一定の効果を上げているようで、プーチン支持率は74%となお高い水準を維持している。

 ウクライナでは、マリウポリでウクライナ軍が最後の抵抗を継続しており、ロシア軍は東部のドンバス州の完全制圧までには至っていない。ヘルソン州では、親ロシア勢力がロシアへの編入をプーチンに要請したというが、ここでもウクライナは反撃している。

 さらに、ウクライナ周辺の旧ソ連地域を見渡せば、ウクライナの現状を見て、多くの地域がロシアとの紐帯を緩めようとしている。

 ジョージア(グルジア)には、親露派で分離独立を唱える南オセチアとアブハジアが存在する。2008年8月、グルジア軍が、南オセチアの首都ツヒンヴァリに対し軍事行動を起こしたが、これに対抗してロシア軍が南オセチアに入り戦闘が行われた。ロシア軍に反撃されたグルジア軍は撤退し、ロシアは南オセチアとアブハジアの独立を承認した。

 その南オセチアでは、5月8日に「大統領選」の決選投票が行われたが、ロシアへの編入を実施するという現職のアナトリー・ビビロフ候補が、編入慎重派のアラン・ガグロエフ候補に敗北した。43%対54%という得票率であった。

 南オセチアは、ウクライナのロシア軍に協力するために戦闘員を派遣したが、そこで戦死者が出たことが、現職への批判につながったようである。

 ガグロエフ政権となる南オセチアが親ロシア路線を継続することは間違いないが、ロシアへの編入に慎重になったことは変化への兆しかもしれない。また、この選挙結果は、ウクライナの東部2州やヘルソン州での親露派の動きにも影響を与えると思われる。