「地学実験室」を置く学校に共通していること

 今回、地学実験室を置いている学校を取材してみて共通していることは何だったか、まとめてみたい。

・高校教育が大学進学に比重を置く以前からの古い歴史がある
・学校として大学受験を第一義としていない
・法人自体が財政的に余裕がある
・地学以外のそのほかの部分でも教員、施設・設備等が充実している

 さらに訪れて感じたことは、地学の教員がみな楽しそうだったこと。恐らく好きなことを仕事にしているからだろう。その証拠に、今回話を聞いた地学の先生たちはみな天体や気象の観測、岩石の採取などの面白さを熱く語ってくれた。

 物理実験室・化学実験室・生物実験室の「表情」は学校によって大きく違うことはないが、地学実験室は例えば成蹊では天体や気象関係の機器や掲示物が多かったのに対し、海城は地層や岩石の実物が中心など学校によって独自色があり、教員の専門=実験室の構成につながっていることが分かった。

 いま地球規模で問題になっている地球温暖化、オゾン層破壊、大気汚染などの環境問題、エネルギー資源、淡水資源、金属鉱物資源などの資源問題、大規模火山噴火、洪水、干ばつ、熱波などの自然災害……我々が抱えている大問題にはみな「地学」が関わっている。特に変動帯にある日本は、南海トラフ地震をはじめ、地学的な現象による問題を避けられない地理的環境下に置かれている。

 これら切実な問題を解決するにはこうした分野の研究者、従事者が大勢必要であり、そのためには地学を勉強しようという生徒を育てる必要がある。

 多くの学校で地学の専任教員がいなくなった背景には、大学入試センター試験が実施されていたころに物理と地学の試験時間帯が同じ時期があり、ほとんどの生徒が物理を選択せざるを得なくなったことがある。今後、大学入試という次元から変えていく必要はあるが、まず第一歩として我々一人ひとりが地学の重要性に気づき、地学教育に関心を持つことが大切だろう。