九州に被害をもたらした令和2年7月豪雨。熊本県人吉市では球磨川が氾濫。街は濁流に飲み込まれた(写真:ロイター/アフロ)

 昨今、日本列島で洪水や地震など自然災害が多発している。山や谷のつくるでこぼこや国土の輪郭を描く海岸線のでこぼこなど、様々な地形が複雑に入り組んだ日本の風景を読むことで、この先に起こりうる自然災害を少しでも見通すことができたなら・・・。

 普段目にする風景からどんなことが分かるのか、その風景を形作っている日本列島はどのようにしてつくられてきたのか。『日本列島の「でこぼこ」風景を読む』(ベレ出版)を上梓した鈴木毅彦氏(東京都立大学都市環境学部地理環境学科教授・同大学火山災害研究センター長)について話を聞いた。(聞き手:鈴木 皓子、シード・プランニング研究員)

※記事の最後に鈴木毅彦さんの動画インタビューが掲載されています。是非ご覧下さい。

──「日本列島は2000万年から1500万年前に、大陸の東の端にあった骨格が日本海の生成、拡大によって押し出されて現在の位置に収まり、その後プレートの沈み込みに伴う地殻変動や火山噴火などが起きて現在のような姿になった」と述べられています。また、日本列島が今も年間数センチメートルずつ動いていることが示されています。このような移動が積み重なることで、土地の形が変化するぐらいの大きな動きになっているということでしょうか。

鈴木毅彦氏(以下:鈴木):年間数センチメートル程度でも、1000万年くらい長い時間を経ることにより、日本海ができるぐらいの大きな動きになっていきます。

──動いている土地の上に我々は生活しているということでしょうか。

鈴木:そうですね。私たちは動いていることを感じませんよね。

 地震などで地殻変動は起きますが、先ほど述べた日本海が開いていくことや、太平洋プレートが近づいてくることを日常的には全く感じません。少なくとも、人間の一生の間に太平洋プレートが近づく距離はわずかです。

 しかし、1000万年、2000万年という時間軸で見れば、日本列島が大陸から離れていったことは大事件になります。ただし、実際に今から1600万年前の時代にタイムスリップしたとしても、目の前で日本海が開いていくことを見て確認できるわけではありません。

──日本の特徴として、島国であり、国土の4分の3が山で雨が多く、河川が急峻で地震が多い、といったことをよく耳にします。また本書の中でも、日本周辺の「でこぼこ度」は著しく大きい、と述べられています。一方で、インドネシアやニュージーランドは弧状に並んだ島々からなり、地震と火山があり、近くに海溝があるという日本と同じ特徴を持つとも述べられています。日本の地理的な特徴や他の地域との共通点について教えて下さい。