この地域はロシア系住民が多数住んでおり、親露派の武装勢力とウクライナ政府軍との戦闘が続いてきた。
クリミアで冷や水を浴びせかけられたアメリカは、ウクライナ政府への軍事支援を強化した。2014年から8年間で約15億ドル(1600億円)もの支援を行い、訓練や装備の近代化に貢献した。今回、侵攻してきたロシア軍に対してウクライナ軍が予想以上の反撃に成功しているのは、この支援のおかげである。
ロシアは親露派武装勢力を後押ししており、そこでは、いわばアメリカとロシアの代理戦争のようになっている。双方に潤沢な武器があれば、停戦は難しい。
ミンスク合意
この状況を見かねたOSCE(欧州安全保障協力機構)は、戦闘を終わらせるために、2014年9月5日に当事者に呼びかけて、ロシア、ウクライナ、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国は、ベラルーシの間で停戦を成立させることに成功した。これがミンスク議定書である。
しかし、その後も戦闘は続き、より多くの国が参加して監視する停戦体制が不可欠となった。そこで、今度はドイツとフランスが仲介役を買って出て、2015年2月11日にウクライナとロシアの間で、ミンスク合意(ミンスク2)が成立した。具体的には、無条件の停戦、捕虜の解放、最前線からの重火器の撤退、東部2州に自治権を与えるための憲法改正などが決められたのである。
だが、この合意の後も、戦闘は止むことなく、ウクライナ政府と親露派武装勢力は、お互いに「相手が停戦合意に違反する行為を実行している」と非難している。ロシア軍は、撤収や武器の撤去を実行しておらず、それへの反感から、ウクライナ政府は2つの人民共和国に対して「特別な地位」を付与する措置を講じていない。ロシアが100%悪くて、ウクライナが100%正しいとまでは断言できず、まさに水掛け論に陥ってしまう。