このような袋小路に入った東部情勢を転換させるために、今年に入って、2月21日、ロシアは、ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国の独立を承認したのである。プーチン大統領は、「ミンスク合意はもはや存在しない」と断言し、遂に24日にはウクライナに軍を進めた。

ウクライナが求めるNATOに代わる枠組み

 ところで、ウクライナはNATO加盟を断念する代わりに、関係国が安全を保障することを求めた。関係国とは、国連安全保障理事会の常任理事国、ドイツ、トルコ、ポーランド、イスラエル、イタリア、カナダである。この提案をロシアは持ち帰って検討し、対案を出すという。

 ウクライナは、攻撃を受けた場合に軍事支援を供与することを条約に明記することを念頭に置いている。強力な保障措置を講じることに固執するのは、1994年のブタペスト覚書の苦い経験があるからである。

 1991年にソ連邦が崩壊した後、核兵器を保有していたベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンが核兵器を放棄することとし、その見返りとして、ロシア、アメリカ、イギリスが安全保障を提供することを約束したものである。1994年12月5日にブタペストで開かれたOSCE会議において署名されたため、ブタペスト合意と呼ばれる。ただし問題があった。安全保障上の法的義務については何も規定されていないことだ。

 結局、2014年のクリミア併合のときには、ブタペスト合意は全く実現されなかったし、今回のロシア軍による侵略に際しても同様だった。

 そのため今回の停戦交渉において、ウクライナは強力な法的担保のある安全保障体制の構築を求めたのである。ウクライナは名前の挙がった国々と協議に入るというが、全ての国が前向きだというわけではない。ウクライナの側に立って参戦することに躊躇する国も多い。これだけの数の国と話し合いとなると、最低2週間は必要となろう。