(舛添 要一:国際政治学者)
4月10日にフランス大統領選挙の投票が行われた。12人の候補が乱立したが、結果は、事前の予想通り、トップが現職のエマニュエル・マクロン大統領(大統領、「共和国前進」、中道)で得票率27.6%、2位が極右のマリーヌ・ルペン(「国民連合」、極右)で23.0%となった。
そのあとは、3位が急進左派のジャンリュック・メランション(「不屈のフランス」、国民議会議員)で22.2%、4位が極右のエリック・ゼムール(評論家)で7.2%、5位が中道右派のヴァレリー・ペクレス(「共和党」)で4.8%、6位が環境保護派のヤニック・ジャド(欧州議会議員)で4.7%、7位がパリ市長のアンヌ・イダルゴ(社会党)1.7%であった(最終確定前)。
第5共和制
フランスの大統領選挙では、第一回投票で有効投票総数の過半数を獲得する候補者がいない場合には、2週間後に上位2人の決選投票が行われる仕組みである。
ドゴール将軍が1958年に発足させた第5共和制では、大統領任期は7年間(再選制限なし)と定められていたが、2000年に行われた国民投票で5年に短縮され、さらに2008年の憲法改正で任期は2期までとされた。
フランスは、大統領と首相が併存する政治システムである。大統領は直接国民投票で選ばれる。国民議会も国民が直接選び、その多数派が首相を決める。私は若い頃、パリで2年間にわたって国民議会で研修・研究に携わり、フランス政治のドラマを観察してきた。
大統領選挙と国民議会選挙の結果が異なると、大統領と首相がおのおの相対立する陣営に属することになる。たとえば、1986年の国民議会選挙の結果、社会党のフランソワ・ミッテラン大統領と保守のジャック・シラク首相という組み合わせとなり、これを保革共存体制(コアビタシオン)と呼ぶ。
21世紀になっても、フランスの主要政党は二分され、保守はサルコジ政権(2007〜2012年)のような伝統的な保守ドゴーリスト(ドゴール主義政党)、革新はオランド政権(2012〜2017年)のような社会党が主導してきた。つまり、第5共和制下では、そのような保革対立が半世紀にわたって続いてきたのである。