仏大統領、減税やエリート校閉鎖を表明 黄ベスト運動受け

仏パリのエリゼ宮(大統領府)で会見するエマニュエル・マクロン大統領。「ENA廃止」の方針を宣言したのはこの会見だ(2019年4月25日撮影)。(c)ludovic MARIN / AFP〔AFPBB News

 フランスは、高度の専門教育を通じて高級官僚や高等技術者、教育者の卵を毎年一定数、規則的に養成する独自のエリート教育体系を維持してきた。国の屋台骨を担う人材を厳格な能力主義によって選ぶ制度は、貴族や超富裕層が血縁やコネを使って国家の要職を「たらい回し」することがないよう、第2次大戦後に導入された。

 ところが、その代表格であり、政府中枢で働く高級官僚を育てる「国立行政学院(ENA)」の廃止を、同校の卒業生であるマクロン大統領が打ち出し、賛否両論を呼んでいる。背景に何があるのか。

4人の大統領と8人の首相を輩出した超名門

 マクロン氏が「ENA廃止」の方針を宣言したのは4月25日、エリゼ宮(大統領府)で行った記者会見の席上だった。記者団の質問に答え、「ENA廃止を含む高級官僚の採用・育成・昇進に関する制度の抜本改革が必要だ」と言明。政府機関の顧問弁護士で、プロサッカーリーグの全仏会長を務めた経験もあるフレデリック・ティリエ氏に、今年秋までに改革案を答申するよう諮問したことを明らかにした。マクロン氏は「もっとうまく機能する何かを創るには、野心的な改革が必要だ」と後戻りしない決意を表明した。

 8月には定例の入試が予定され、受験生たちは不安だろう。ENAを廃止するだけに終わるなら、国の運営を託す人材が枯渇するとの懸念も浮上した。まず、ENAがいかなる学校なのかを見ておこう。

 ENAは東部ストラスブールにある。第2次大戦後の1945年に設立され、当初はパリに置かれた。創設時は、競争に基づく高級官僚養成を進める民主的制度を体現する機関と位置づけられた。大学・大学院卒業者から毎年80~100人の極めて優秀な学生を選抜し、2年間の教育と高難度の数次の試験を通じて学生を篩いにかけ、卒業生は成績に応じて中央官庁の重要ポストや県副知事などに任命される。国家運営に必要な専門的な知見や能力を身に付けさせる点で、高度な職業学校ともいえる。学生の3分の1は海外からの留学生が占め、日本政府からも留学生が派遣されている。

ストラスブールにある「超名門」フランス国立行政学院(写真:HEMIS/アフロ)

 卒業生たちは「エナルク」と呼ばれる。ENA(エナ)の音に、「権力者」などを意味した古代ギリシャ語の「アルコス」を合成した言葉で、国家権力を担う頼もしいエリートへの称賛を込めた響きがにじみ出る。