(山田 敏弘:国際ジャーナリスト)
過激派組織「イスラム国(IS)」がシリアで完全に排除されたと、欧米から支援を受けているシリア民主軍(SDF)が発表したのは、2019年3月のこと。ISは、シリアで最後の砦だったイラク国境に近い東部バグーズに追い詰められ、結局シリアでの拠点をすべて失った。
ただそれでも、ISが地球上から根絶されたわけではない。シリアからはいなくなっても、残党が世界中に散らばって活動を続けるだろうという懸念も出ている。
インド・カシミール地方がISの拠点化する懸念
そして4月、スリランカでISによる連爆破テロ事件が発生。日本人を含む少なくとも258人が犠牲になり、ISが犯行声明を出した。またその約1週間後には、最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者の映像が公開され、「死んだ“兄弟”の復讐として、8カ国で92の作戦を実行した」とうそぶくなど、直ちにISによるテロ活動がなくなるとは考えにくい状況にある。
そんな中、インド発でISに絡む不穏なニュースが伝わってきた。英ロイター通信によれば、5月10日、ISがインドに「Wilayah of Hind(ヒンドの州)」という支配地域を設置したと宣言と報じたのだ。このISの声明は、インド警察当局が同日、インド北部のカシミールでISに忠誠を誓ったとされる戦闘員を殺害したというニュースに関連しているとみられている。
このニュースを受け、ISは次のインド北部カシミール地方を拠点にするのではないかという懸念が出ている。だが、ISがカシミールから再び台頭する可能性はあるのだろうか。そしてそもそもなぜ、カシミールなのか。