ヨーロッパの規制緩和

 オミクロン株の感染力は凄まじく、スーパーコンピュータ「富岳」を使ったシミュレーションでは、マスクをした状態でも50cm以内に近づいて会話をすると感染リスクが高まることが分かっている。しかし、重症化することはほとんどないことが救いである。

 ヨーロッパでは、コロナが「社会を混乱に陥れる深刻な疾病では最早ない」という認識が広まっており、デンマークやスウェーデンでは、マスク着用やワクチン接種証明書の提示などのコロナ規制を全て撤廃した。イギリスやフランス、スイスなども同じ方向で規制緩和を進めている。その理由は4つある。

 第一に、オミクロン株が弱毒性であり、死に至ることは稀であることである。

 第二に、ワクチン接種が進んでおり、たとえばイギリスでは65%の国民が3回目の接種も終えている。必要ならば、4回目、5回目と追加接種することによって感染を防止できるからである。

 第三は、メルク社のモルヌピラビルのような経口治療薬が次々と開発され、承認されていることである。このことによって、たとえ感染しても容易に治療できるようになっているからである。

 第四に、強力な感染防止のための規制を実施することは、経済に被害をもたらし、社会の運営に大きな支障を来すからである。

 オミクロン株の感染者の症状を見ると、季節性のインフルエンザや普通の風邪とあまり変わらず、しかも飲み薬の服用で簡単に治るとなれば、緊急事態宣言のような強力な措置は必要ないし、むしろマイナスのほうが大きくなる。

 そこで、いまなお感染者が1日に4万人のデンマーク、3万人のスイス、10万人のイギリス、30万人のフランスなどで、規制緩和に舵を切ったのである。感染者数の経緯を見て、いずれの国もピークアウトしたと判断したのである。

 これら4カ国は、年末年始からオミクロン株の感染による感染者数増加が始まっており、その点では日本も同様である。日本もそろそろピークアウトする時期に来ていると考えられる。しかし、対応が後手後手に回る政府が、思い切った舵取りで針路の変更ができるかどうか、あまり期待できそうもない。