スペインのマドリードの薬局で販売されている抗原検査キット。2021年7月撮影(写真:ロイター/アフロ)

 1月22日には東京で新型コロナウイルス感染者が1万人を超え、27日にはまん延防止等重点措置の対象に18道府県が新たに加えられ、これで合計34都道府県で実施されることになった。この第6波で主流になったオミクロン株は、これまでよりも家族内で感染する確率が高く、感染が倍増するまでの時間が短いという感染力の高さに警戒が必要だ。

 そこで必要性が高まっているのが感染の有無を調べる検査だ。

 現在、薬局で薬機法(旧薬事法)に基づく承認を受けた体外診断用医薬品の医療用抗原定性検査キットがセルフチェック用に販売されている。これはウイルスを特徴付けるたんぱく質(抗原)を調べるもので、症状がある場合に自宅などで本人が鼻水と鼻粘膜を採取して使い、約30分で陽性か陰性かの判定が出るというものだ。ウイルスの遺伝子を調べるPCR検査とは別の種類の検査になる。

 本来、医療者が使う検査キットを厚生労働省が21年9月27日より特例的な対応として薬局販売を認めたのは、感染の疑いがある患者を確実に受診につなげることを目的としつつ、薬機法の承認を受けていないものや質が保証されていない悪質な検査キット販売への対策でもある。

 第6波の急激な感染拡大において、医療用抗原定性検査キットによるセルフチェックはどう活用できるのか、新型コロナやワクチンに関する正確な情報発信を進める医療従事者によるプロジェクト「こびナビ」の事務局長で耳鼻科医の黑川友哉氏に聞いた。

感染が拡大している状況でのセルフチェックは危険

――薬局で販売されている体外診断用医薬品の医療用抗原定性検査キットは、第6波で役に立つでしょうか。

黑川友哉氏(以下、黑川) この検査キットは疑わしい症状のある方が使うことが想定されていますが、私は使い方に様々な注意が必要と考えています。

 まず、症状がある場合にセルフチェックを行って陽性の判定が出れば、もちろん医師による診断の確定と治療方針を決定する必要があります。陰性だったとしても偽陰性の可能性がありますから絶対にコロナでないとは言えないわけですし、インフルエンザなど他の感染症の可能性を考えると安心できる結果とは言えません。

 また、セルフチェックの結果が陰性だからと安心して人と接触すると感染を拡大させてしまうことになります。そもそも疑わしい症状があるのなら出勤も通学もしないほうがいいし、ただちに医療機関を受診していただきたい。気になる症状があってセルフチェックをしようと思われるのなら、まず医療機関に問い合わせた上で受診するべきと考えています。

――風邪のような症状がある、濃厚接触者となった場合に医師がPCR検査をする必要があると判断すれば、PCR検査費用は無料ですね。

黑川 自分で検査キットを購入してセルフチェックをしたいという方は、新型コロナウイルスに感染していないかどうかを確認して安心したいという気持ちがおありだろうと思うのですが、安心する目的では使わない方がいいです。検査というものは、その結果で病気と判断したり行動を変えたりするためのものです。その後の行動が変わらないのなら検査をする必要もないので、安心のためにセルフチェックする意味はほとんどありません。