1月22日、トンガ支援のため、同国ファアモツ国際空港に到着した日本の航空自衛隊の輸送機(提供:防衛省統合幕僚監部/AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 海底火山の大規模噴火の被害を受けた南太平洋の島国トンガへの各国の支援が進む一方で、新型コロナウイルスへの感染対策が障壁になっている。

 トンガ沖に浮かぶ小さな島を消滅させてしまうほどの海底火山の大規模噴火は今月15日に起きた。日本にも想定外の津波が襲来して、高知県や徳島県で漁船が転覆するなどの被害も出た。

 トンガでは噴火による火山灰や津波によって、各家庭の貯水タンクの被害が甚大で、飲料水の確保が急務となった。近隣のニュージーランドやオーストラリアが軍艦や輸送機を派遣して支援に乗り出したが、ここで問題となったのがトンガの新型コロナ対策だった。

「ゼロコロナ」政策、医療体制の脆弱さと国民の肥満が原因

 トンガではこれまでに新型コロナウイルスの感染者を1人しか出していない。同国は新型コロナウイルスが世界的に流行をはじめた2020年3月に非常事態を宣言。政府の特別の許可がない限り渡航者の入国を原則禁止する厳しい水際対策をとっている。そこに支援活動を通じて新型コロナウイルスを持ち込まれることに強い懸念を示した。

 すでに支援物資を港や空港にいわば“置き配”する方法で人と人の接触を避けているが、支援物資を積んだオーストラリア軍の輸送機の隊員に、新型コロナの陽性者が出たことから途中で引き返すなど、混乱もでている。日本からも支援に自衛隊のC130輸送機2機を派遣しているが、この自衛隊員から26日までに4人の新型コロナ陽性者が確認されている。

学校だろうか、SNSにアップされた津波の被害に遭ったトンガの建物の写真。床や椅子は泥をかぶり、室内には書類などが散乱している(提供:Malau Media/ロイター/アフロ)

 トンガがここまで厳しい「ゼロコロナ」対策をとるのは、島嶼国ゆえの医療体制の脆弱さと、肥満の問題を指摘する声がある。