(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
北朝鮮は5日と11日、極超音速ミサイルを発射した。11日の発射については、韓国の国防部が「5日に発射したミサイルは一般の弾道ミサイルであり、極超音速ではない」と発表したことに対する北朝鮮の答えだとの見方も出ている。11日の極超音速ミサイルは最高速度がマッハ10に達したとされ、性能が大幅に向上していることを如実に示していた。
北朝鮮の弾道ミサイル発射はそれだけでは終わらなかった。
まず14日に、平安北道の義州付近で列車上から「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれるKN-23短距離弾道ミサイル2発を発射した。これは米国が北朝鮮のミサイル開発に関与したとして北朝鮮国籍6人とロシア人1人、ロシア1団体を制裁の対象としたことへの報復である。北朝鮮は外務省報道官談話で「米国が我々の合法的な自衛権行使を問題視するのは明白な挑発であり強盗的な論理」と述べたが、これがミサイル発射につながったと見てよいのではないか。
さらに北朝鮮は17日に発射した弾道ミサイルと推定される2発の飛翔体について「戦術誘導弾射撃試験」だったと明らかにした。この飛翔体は「北朝鮮版ATACMS」のKN-24であると把握された。
これで、今年に入ってまだ3週間もたたないうちに、北朝鮮が実施したミサイル発射は4回を数えることになった。
北朝鮮、ミサイル高度化への固い意思
北朝鮮をめぐっては、もう一つ、新たな動きがあった。
北朝鮮は新型コロナウイルス感染症発生後に封鎖されていた北朝鮮―中国間の貨物列車運行を再開した模様だ。16日午前、北朝鮮から貨物列車が中国に到着し、医薬品や生活必需品を積んで戻った。ただ、これが両国の国境貿易の全面再開につながるのかは定かではない。
北朝鮮は、これまで新型コロナ感染症の流入を恐れ中国との国境を封鎖してきた。しかし、オミクロン株が世界的に急拡大し、中国にも入ってきた時点で貨物列車の運行を再開したということは、北朝鮮の医薬品、生活必需品の不足が極めて深刻な状態にある証左だろう。