そのような好例があるにもかかわらず、交差接種を勧めることを政府も厚労省も、そして何よりもマスコミが行わない。そのため、ファイザーのワクチンに希望が集中するのである。
そもそも、誰が、どのようなデータに基づいて「2回目接種から8カ月後」にブースター接種をすると決めたのか。海外では、6カ月でワクチン効果が平均して4分の1に落ちることは広く知られていた。ワクチンの在庫や、自治体など関係者の手間を考慮しての8カ月という決定ではなかったのか。それは本末転倒である。科学やデータに基づく政策ではない。ワクチンによる免疫効果が漸減し、6カ月前に追加接種すべきというデータを基に対応を決め、それを実現するのに必要な資源を投入するのが政治家の役割ではないのか。
2類相当対応では限界
内閣支持率が高めに推移し、岸田首相は慢心しているかもしれないが、現実を見れば安堵できる状態ではない。世論調査の内閣支持率も落ち始めた。日経新聞の世論調査(1月28~30日)によれば、内閣支持率は59%で前回よりも6ポイント下落している。不支持率は30%で4ポイント増加している。3回目のワクチン接種の遅れ、検査キットや経口治療薬の不足など、コロナ対策の不備に対する批判が強まっていると考えてよい。
実際、新型コロナウイルスの感染増加が止まらない。年始からの第6波は、オミクロン株の強烈な感染力のため、一週間で倍増するという急拡大である。伸び率は少し落ちたが、保健所や医療の現場では野戦病院のような大混乱となっている。エッセンシャルワーカーと呼ばれる人々の間でも感染者や濃厚接触者が増え、欠勤となって施設を閉じねばならない状態になっている。家庭内感染も増え、保育園や学校も休園、休校するところが続出し、親が仕事に行けないなど支障を来している。
そこで、コロナを2類相当の感染症としているにもかかわらず、軽症者は自宅療養を可能にしたり、濃厚接触者の待機期間を短縮したり、規制緩和の手を打ったりしている。また、検査キットが不足し、医師ですら入手できずにコロナ感染の判定ができなくなっている。そのため、感染者の家族などの濃厚接触者について、検査なしで症状から判断して、医師が陽性と認定してよいということにした。これは、「検査と隔離」という感染症対策の基本原則違反であり、背に腹はかえられないとはいえ、極論すれば滅茶苦茶である。
さらに、医師たちは、経口治療薬「モルヌピラビル」も容易に手に入らないと苦情を述べている。