統計軽視

 しかも、東京都は2月2日からこの「みなし陽性者」数を加えた形で、感染者数を公表した。2日の感染者数は2万1576人で、うち「みなし陽性者」は589人である。ところが、NHKをはじめその日のほとんどのマスコミが、集計方式の変更すら知らせずに、この全体数しか伝えていない。マスコミが、国民が知りたいことや知るべきことをきちんと伝えるという役割を放棄している。

 朝日新聞の調査によれば、「みなし陽性」を認めているのは、北海道、青森、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、東京、神奈川、新潟、静岡、京都、大阪、和歌山、岡山、福岡、佐賀、長崎の20都道府県である。

 この点からも、感染者の全国合計(2日は9万4930人)の統計の連続性や正確性に疑義が生じてくる。

 さらに言えば、オミクロン株の場合、無症状者や軽症者が多いので、実際の感染者数はその何倍にも上るであろうから、統計の意味がますます無くなってくる。

 今回の「みなし陽性」をめぐる統計問題の背景には、統計についての軽視がある。統計は近代国家の基礎である。簡単に統計の仕組みを変えれば、継続性、連続性が断たれ、比較できなくなり、統計の意味が失われる。厚労省、国交省、総務省などの統計改竄が発覚している。これでは近代国家とは言えない。

 なぜこんなことになったのか、役人の人事を政治家の恣意に任せるような官邸主導の悪弊も原因だろう。この国が何十年も低迷している理由の一端がこの統計軽視にある。