(舛添 要一:国際政治学者)
南アフリカで、新型コロナウイルスの新変異株が発見され、世界を恐怖に陥れている。WHOは、この変異株をギリシャ文字でオミクロン株と命名したが、ウイルスのスパイク(ウイルス表面の突起)の変異数が30という多さであり、感染力が強いと見られている。また、変異の規模が大きいので、従来のワクチンが効かない可能性もある。ただ、今のところ重症例や死亡例は報告されていない。患者を診察した南アフリカの医師によると、軽症の者が多いという。
最初は南部アフリカ地域やヨーロッパや香港での感染が報じられたが、日本や韓国も含む世界中への急速な拡散が確認されており、感染のスピードに驚かされる。12月3日の段階で、5大陸、36の国と地域に広がっている。南アフリカでは、オミクロン株感染者が1日で倍増したという。そして、オミクロン株がデルタ株を駆逐し、全体の74%を占めるようになっているという。
今の段階では、この新変異株のウイルス特性が未知であり、データを収集することが第一である。もし、既存のワクチンが有効でなくても、mRNAを活用したファイザーやモデルナの場合、100日間で新たなワクチンを製造できるという。その意味では、過度に恐れる必要はないとも言えよう。
岸田首相が胸張った「外国人の入国禁止」の決断をWHOが批判
岸田首相は、11月29日、30日午前0時から全ての外国人の入国を禁止する措置を決めた。1カ月間の緊急対応である。また、国土交通省は、内外の航空会社に対して日本着の全国際線の新規予約を停止するように要請した。緊急避難的な措置だというが、各方面に大きな影響を及ぼしている。
スポーツ、コンサートなどのイベントに必要なメンバーが海外から来日できないことになり、主催者は対応に苦慮している。
とくに年末年始の時期に里帰りを予定している日本人には寝耳に水の話であり、せめて日本人だけでも何とかならないのかという声が高まった。これを受けて、2日、政府は、国際線の新規予約停止要請を取り下げた。3日間で方針変更という朝令暮改である。
岸田政権が迅速かつ徹底した水際対策を講じたのは、安倍・菅政権のコロナ対策が後手に回り、大きな批判を浴びたからである。そこで、逆に先手を打っていって実績を上げようとしたのである。