(舛添 要一:国際政治学者)
中国の女子テニス界の世界的スタープレーヤーの彭帥(ほうすい)選手が行方不明になり、国際的に波紋を広げている。
事の発端は、11月2日の深夜に、彼女がSNSで、前副首相の張高麗に性的関係を強要されたと告白したことだった。30分後には、中国当局によって交流サイト、微博(ウェイボ)からこの投稿は削除されたが、内容は世界中にインターネット上で拡散されてしまった。そして、彼女の行方も分からなくなった。そこで、大坂なおみ、セリーナ・ウイリアムズ選手など世界のテニス界からも彼女の安否を気遣う声が高まり、国際的な話題となった。
北京五輪の成否に直結し始めた「彭帥失踪」問題
慌てた中国政府は、彼女が元気に仲間と食事したり、テニスのジュニア大会で子どもたちと交流したり、自宅でリラックスしている写真や動画を公表した。彼女が元気であることを世界に対して声を大にして訴えたのである。
さらには、IOCのバッハ会長と彭帥がテレビ電話で談笑する写真まで公開したのである。
2月に開催される北京の冬季五輪を成功させることは、習近平政権にとっては至上命令であり、元政権幹部の不倫スキャンダルごときでその重要な課題の遂行に支障があってはならないのである。