(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
来年2月4日に開幕する北京冬季オリンピックまで2カ月余り。
ここへきて米国のバイデン大統領は「外交的ボイコット」を検討していることを明らかにした。中国の人権問題を理由に、選手団とは別に政府関係者を一切派遣しないというものだ。
最初にワシントン・ポストが報じると、18日に記者からの質問にバイデン大統領が「検討している」と明言した。つまり、選手は送るがあとは勝手にやれ、国として相手にしない、という意向を示すものだ。
バイデン大統領の発言に呼応するように、英国でもジョンソン首相が外交的ボイコットを検討していることを、地元メディアが報じている。
では日本はというと、19日に岸田文雄首相が官邸で記者団の質問に答えて、「それぞれの国でそれぞれの立場、考えがある。日本は日本の立場で物事を考えていきたい」と言及するに留まっている。
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米国では今年1月19日、トランプ政権の最終日に当時のポンペオ国務長官が、中国の新疆ウイグル自治区におけるイスラム教徒少数民族への「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を認定。バイデン政権もその姿勢を変えていない。
米国議会ではその直後に、開催地の変更を求める決議案や、IOC(国際オリンピック委員会)が応じないのなら米国のボイコットを求める決議案の提出が相次ぎ、5月には民主党のペロシ下院議長が各国に外交的ボイコットへの賛同を呼びかけていた。
それどころか昨年のうちから、世界各地の160以上の人権団体がIOCに北京開催の見直しを求める共同書簡を送っているとされ、英国、カナダ、オーストラリアでも政治家がボイコットについて言及。今年7月には、欧州議会や英国議会が、中国が人権問題を改善する姿勢を示さない場合は外交的ボイコットをすべきとの決議や動議を採択していた。