岸田文雄首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ヨーロッパでは、新型コロナウイルスの感染が再拡大し、各国は対応に追われている。「コロナとの共存」路線を転換して、感染防止策の強化を図ろうとする動きが強まっている。

 その典型は、オーストリアである。10月中旬から感染が拡大し、新規感染者が、13日には過去最多の1万3152人に達した。そのため、政府はワクチン未接種者に対して、15日から10日間のロックダウン(外出禁止)措置を講じた。食料品の買い出し、勤務など以外は、家にとどまれということである。17日には、新規感染者は1万4416人となっている。

 オーストリアのワクチン接種率は64.6%であり、他のヨーロッパ諸国と比べても高くはない。患者の急増で、ザルツブルグでは、集中治療室が満杯になっている。政府が危機感をもって厳しい対応をしているのは、そういう事情があるからである。

11月17日のウィーンの光景。ワクチン未接種者を対象にロックダウンが実施されていたが、22日からは全国民を対象にロックダウンがなされることになった(写真:AP/アフロ)

ふたたび厳戒態勢に入った欧州諸国

 19日現在の世界の主要国のワクチン接種率ランキングを見ると、①スペイン80.20%、②韓国78.57%、③日本76.09%、④中国74.35%、⑤イタリア72.76%、⑥フランス68.81%、⑦イギリス67.54%、⑧ドイツ67.17%、⑨ブラジル60.04%、⑩トルコ58.61%となっている。

 ヨーロッパは陸続きであり、ウイルスは国境を超えて移動し、感染が容易に拡大する。オーストリアの隣の大国、ドイツでも、10月中旬から感染が増え始め、17日には、新規感染者が6万8366人と過去最多を記録している。政府は、ワクチン未接種者に対して接種をするように要請するとともに、各州は感染防止のための規制を強化している。

 シュトゥットガルトのあるバーデン・ビュルテンベルク州では集中治療室が満杯になり、警戒レベルが引き上げられた。また、ミュンヘンでは、クリスマスの飾り付けを売る恒例のクリスマス・マーケットが開催中止になった。