2021年1月にアメリカ発の音声配信アプリClubhouseが上陸して以来、SNS大手のFacebookやTwitterでも音声ツールが用意されるなど、インターネット上で“声”による情報発信や交流がブームとなっている。個人の発信から複数が集まって会話を楽しむミーティング、講演など使い方は様々で、新聞やウェブ媒体などマスメディアも音声配信の利用を始めている。

 2016年に設立された音声プラットフォーム「Voicy」は、芸能人や一般のパーソナリティーによる「声のブログ」、全国紙の記事などメディア情報を声で聴ける「メディアチャンネル」、企業が発信する「社外報(オウンドメディア)」など、1000以上のチャンネルを擁するインターネットの音声プラットフォームだ。毎週の聴取者数は、2019年から2020年の1年間で4倍となり、Clubhouseが上陸した後も増加を続け、ユニークユーザーは1100万人を突破した。

 YouTubeなど動画配信の影響力の大きさが世間の注目を集めるが、今なぜ声による情報や交流が増えたのだろうか。Voicy(https://voicy.jp/)を設立した緒方憲太郎氏に聞いた。

「Voicy」ウェブサイトのトップページ。チャンネルはカテゴリ別に分類されている

「声」は文字や映像よりもスピーディに人に情報を伝えるツール

――今から5年前にVoicyを設立された時には、今の音声サービスの盛り上がりを予見されていたのでしょうか。

緒方憲太郎氏(以下、緒方) スマホで画像や動画が簡単に手に入れられるようになった次に、音声の時代がくるだろうと考えていました。スマホやパソコンに話しかけて指示を出すという技術が現実になり、画面に縛られない時代がやってくるだろうと。話す/聞くというのは多くの人が日常でやりとりする行為です。もし、明日大災害が起きるという情報を手に入れてしまったら、どうするでしょうか。まず、近くの人に話すと思います。道具やスキルもほぼ必要ありませんし、最短で人に情報を伝えられますね。さらに声は感情や切迫した状況などを含められるものですから、根源的な価値があると考えていました。

 現在、音声サービスが盛り上がっていると言われますが、これはユーザーが増えることと、関連するお金が動くということです。Voicyでは音声で発信するプレイヤーもリスナーも両方のユーザーが増えています。広告市場としても有望な分野となり、企業の参入も今年(2021年)になって増えてきました。従来の音声メディアであるラジオは、スポンサーという収益モデルしかありませんでしたが、ウェブの音声サービスは発信者にリスナーが直接課金するという新しいマネタイズがあります。ユーザーとコンテンツの増加、マネタイズができてきたことが、音声サービスが新しい産業として伸びるようになった柱だと思います。

Voicy代表の緒方憲太郎氏(写真:同社提供)