一方の原発容認派の意見も聞いた。皆、「名前も顔も一切出すな」という条件付きだ。

 漁港の見える高台の公園のベンチに座っていた男性は、

「今更原発をやめろと言って何になんになる。半島の果ての果ての町じゃ、産業といっても漁があるだけだ。しかもマグロなんて『獲れたらなんぼ』の博打のようなもんだ。みんな貧乏なんだ。原発の協力金で町の予算も潤う。原発関連の仕事もある。店も飲み屋もみんな助かるんだ。何が悪い! 町が潰れてもいいのか!」

 と気色ばんだ。

「もう後戻りはできないんだから」

 別のマグロ漁師はこう語った。

「初めは原発に反対だったよ。だが、漁業補償で俺たちの生活は確かに良くなった。問題はこれからだ。冷却水を海に流したら潮に敏感なマグロは来なくなるかもしれん。だから補償金は有り難い。人様から文句を言われる筋合いはないよ」

 そう話す誰の顔からも複雑な思いが伝わって来た。複雑なだけに語気は強くなる。

「大間の海は豊かだった。昆布だけでも充分生活はできていた」

 という人もいた。その豊かな砂浜は原発誘致で消えた。

「もう後戻りは出来ないんだから。仕方ないんだ」

 そう話す彼の言葉の奥に、町民の負った小さくはない心の傷を感じた。