トルコは、ナゴルノ・カラバフ紛争において、同じトルコ系でイスラム教徒が多いアゼルバイジャンを軍事的に支援してきたが、今回はAIドローンという隠し玉で勝敗の帰趨を決める役割を果たした。

 今回のトルコの支援は、トルコ系という民族の血とイスラム教という信仰の絆が、国際社会において依然として一定の役割を果たすことも示した。

係争地として知られるナゴルノ・カラバフ州の光景。アゼルバイジャン軍の兵士が国旗を立てている(写真:ロイター/アフロ)

 火薬や核兵器など、兵器は世界史を大きく変えてきた。今回のAIドローンは、軍事史を変えるくらいのインパクトのあるものだ。そのことを知るために、世界の軍事技術の大きな変遷を見ていきたい。

世界史を激変させた火薬の存在

 矛や盾、刀といった原始的な武器による戦争の形態を大きく変えたのは、火薬である。

 火薬は宋の時代の中国で発明されたが、世界史に大きな影響を与えるようになったのは、15世紀頃からオスマン帝国を含むヨーロッパ・地中海地域で使われるようになってからだ。

 火薬を大量に使う大砲が初めて本格的に使用されたのは、オスマン帝国によるコンスタンティノープル攻撃(1453年)であるとされる。ヨーロッパ社会を恐怖のどん底に陥れたコンスタンティノープルの陥落は、実は当時の先端軍事技術によるものだった。

 また、スペインやポルトガルによる新大陸の植民地化においても、火薬の存在は大きな威力を発揮した。なぜなら、当時のインカ帝国やアステカ帝国は、火薬を一切知らなかったからだ。新大陸の人々は、いきなり爆発する物体を見て、悪魔が到来したと思うくらいの恐怖を覚えたのではないだろうか。

 歴史に「if」は禁物であるが、もしオスマン帝国を含むヨーロッパ・地中海の国々が火薬を戦争に用いなければ、世界史は全く違った姿になったであろう。中南米やアジア、アフリカといった地域の植民地化も違った形、おそらくはもっとマイルドな形になっていた可能性が高い。

 その後、武器は科学技術の発展を受け大規模化していく。