雄大な大コーカサス山脈(筆者撮影)

プロローグ
ナゴルノ・カラバフ紛争停戦合意

 筆者は本誌JBPressに今年9月30日、アゼルバイジャン共和国とアルメニア共和国間の「ナゴルノ・カラバフ紛争再燃(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62306)」を、10月8日に「ナゴルノ・カラバフ紛争激化(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62429)」と題するリポートを発表しました。

 現地での戦闘開始は2020年9月27日朝5時前後。

 双方が双方を「相手国から最初に攻撃を受けた」と非難しており真相は藪の中ですが、筆者は状況から判断して、今回はアゼルバイジャン軍がトルコ軍事顧問団の支援を受けて、満を持して侵攻開始したものと推測しております。

 筆者は従来のナゴルノ・カラバフ紛争に鑑み、長くても1~2週間で停戦合意に達するものと予測していましたが、過去3回の停戦合意は合意発効直後に破られました。

 4回目の停戦合意はロシアのV.プーチン大統領の仲介により、モスクワ時間11月10日午前零時(日本時間同日午前6時)に発効。

 11月11日現在、曲りなりにも停戦合意は順守されています。

 今回は実質、アゼルバイジャン軍の勝利、アルメニア軍の敗北(降伏)と言えましょう。

 ただし、アルメニア軍は自軍戦死者数を毎日発表しており、11月9日現在の累計戦死者数は1221人ですが、アゼルバイジャン軍は戦争開始以来、一度も自軍戦死者数を発表していません。

 これは、アゼルバイジャン軍の戦死者数がアルメニア軍を上回り、発表できないのだと推測します。もし下回っていれば、発表しているはずですから。

 アゼルバイジャン軍は圧倒的な武器・兵力を投入して、電撃作戦開始。

 今回の侵攻作戦では、アルメニア側に占領されているナゴルノ・カラバフと同地とアルメニア本土を接続する地域全土を占領・奪還できたはずですが、中途半端な停戦で合意しました。

 なぜでしょうか?