BTCパイプライン建設現場(筆者撮影)

プロローグ
ナゴルノ・カラバフ紛争激化

 筆者は本誌JBpressに今年9月30日、アゼルバイジャン共和国とアルメニア共和国間の「ナゴルノ・カラバフ紛争再燃(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62306)」と題するリポートを発表しました。

 現地での戦闘開始は9月27日朝5時前後。双方が双方を「相手国から最初に攻撃を受けた」と非難しており真相は藪の中です。

 しかし、筆者は状況から判断して、今回はアゼルバイジャン軍がトルコ軍事顧問団の支援を受けて、満を持して侵攻開始したものと推測しております。

 原稿を執筆した9月29日にはナゴルノ・カラバフに関する国連安保理が開催されることになっており、この場で何らかの紛争解決の糸口が見つかるものと期待していたのですが、成果はゼロ。

 10月1日には米・露・仏の3大統領が即時停戦を呼びかける3国共同声明を発表しましたが、これも単なる口先介入のみで終わりました。

10月7日現在の戦況

 10月7日現在、アルメニア軍とナゴルノ・カラバフ共和国軍の劣勢は明白となり、アゼルバイジャン側はアルメニア軍に占領されていた土地の奪還に成功しつつあります。

 トルコ軍事顧問団がアゼルバイジャン軍の軍事行動に協力しているとの未確認情報もあります。トルコ語もアゼルバイジャン語もほぼ同じなので、意思疎通に問題はありません。

 前回の大規模紛争は2016年4月2日に戦端が開かれ、4日間で停戦したので、筆者は今回も短期間で停戦合意に達すると予測していました。

 ところが豈図らんや、アゼルバイジャン側は失地奪還を目指すべく、戦闘継続の意思を明確に表明。10月7日現在、現地では激戦が続き、民間人の被害も拡大しています。

 アゼルバイジャン大本営発表によれば、アルメニア軍はBTC原油パイプラインの輸送インフラを攻撃しようとしているとのことですが、筆者はアルメニア軍が石油・ガス関連施設を意図的に攻撃することはないと考えております。

 本稿では、9月27日から10月7日までの戦況を概観し、現地では今なにが起こっているのか、なぜ今回の戦闘はまだ継続しているのか、双方の武器はどこから供給されているのか、なぜアゼルバイジャン側は停戦交渉を拒否しているのか、戦闘終結の見通しはあるのかどうかなどを分析したいと思います。