綿密な計画が原因「PDCAの罠」
今の日本では、「交付金」はどんどん減らされ、研究費は基本的に競争的資金として配分される仕組みとなっている。しかし競争的資金という配分方法では、実際には画期的な成果を出しにくいように思う。「PDCAの罠」にかかりやすいからだ。どういうことか。当初の計画(Plan)に思考が縛られてしまうためだ。
競争的資金に応募する際、3年間程度の研究計画を立てて申請する。この計画は、審査側が「これならうまくいきそうだ」と、成功をイメージできる説得力のあるものに練り上げる。自分でも自信の持てる計画だったからこそ、実際に実験してみて、計画通りに研究が進まない現実に直面した時、頭が真っ白になる。
本当なら、計画がうまくいかないことに気づいたらすぐさま抜本的に計画を練り直すことが必要だが、3年分の研究計画を全面的に改めるというのは作業的にも心理的にも辛いものだ。最も自信があった計画だっただけに、他に思い浮かぶのは、せいぜい二番煎じの計画となる。
結局、申請時の計画からあまり変わり映えしないまま、惰性で(茫然と)実験を続けてしまう人が少なくないようだ。自信があった計画だけに、見通しを誤ったとは言いたくない。そんな心理も働いてしまうらしい。