(篠原 信:農業研究者)
「基礎研究に力を入れる政策を」ということはノーベル賞受賞者も口をそろえて言っている。
(参考)『これ以上「基礎」研究を軽視すると日本の科学は「ネタ切れ」に』https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65508
では、基礎研究を支援するにはどうしたらよいのだろうか。もちろん基礎研究推進のため、巨額のプロジェクトが立ち上げられているのは承知している。しかし、研究者の多くが「そうじゃないんだな・・・」と感じ、SNSでも異論がよくみられる。おそらく、政治家や政策担当者は、基礎研究をどうすれば支援できるのか、いまひとつイメージできていないのかもしれない。
基礎研究の支援はどうするとよいのか、私の経験を交えつつ、2点提案したい。
70万円の予算で世界初の技術を開発
私は農業研究者としてこれまでに2つ、学会から注目される成果を世に送り出すことができた。クオルモンと、有機水耕。
クオルモンを分解して病原菌の活動を阻止する研究はシンガポール大学に次いで2番目だったので世界初ではなかったが、有機水耕(水耕栽培で有機質肥料を利用する技術)の実用化は、世界初だった。水耕栽培が誕生してから140年以上、世界で誰も成功していなかった技術だった。
その研究の原資が「交付金」だ。ここで言う「交付金」とは、国の研究機関(大学含む)に所属する研究者に、一人頭、決まった額が配分される研究資金のこと。当時、年に70万円ほどの、多くはないが少なくはない研究資金を頂いて、2つの研究成果は生まれた。